エクソシストも人間ということ



 たとえば、大切なその人が死んだら、その人をアクマにしないとは限らない。





 二人とは仲良くやっていたつもりだった。

 だが、いつからだろう。二人の間に普通とは違う何かを感じ、その間に割って入れないことに気づいた。
 オレは少なくともこの教団の誰よりも、ユウと仲がよいと思っていた。意地っ張りな彼の理解者はオレしかいない
と自負するほど。
 アレンは結構最近知り合ったけど、気だては悪くないし、考えてることが理解できない相手じゃなかったから、割
とすぐうち解けた。
 何より、オレたち三人は教団の中で年が近かったから、仲良くなるのは必然だった気がする。

 だが、あの二人は“仲が良い”なんて言葉じゃ片づけられない感情をお互いに抱いていたらしい。周りには隠して
いたつもりらしいけど、一番近くにいたオレにはバレバレ。つーか問い詰める間もなく、向こうから言われた。
 頭の回転がやや鈍いユウと、年下の弟分だったアレンに対して、自分は保護者のつもりでいた。そんな二人がいき
なり親に黙ってお付き合いだなんて!全く最近の若者は性別も何もあったもんじゃない。人の前でべたべたイチャつ
きやがって。けど、頬を赤らめながらニコニコユウに話しかけるアレンと、それを面倒くさそうにでも嬉しそうに応
対するユウを見てるのは嫌じゃなく、むしろ安心感さえ覚えた。

 それと同時に、一つ思い知らされること。一人取り残された孤独感。その孤独感の中で知った感情。
 いつの間にかオレってユウのこと好きだったんじゃねぇの?





 その日は、アレンと任務から帰る途中だった。今回の任務はただのデマ。結局何も見つからないまま、オレたちは
列車に乗り込んだ。
 アレンは何とも残念そうで、退屈そうな表情で窓の外を見ている。
「まぁ、アレン、こんなことって結構あるもんだからさ」
「分かってますけど、僕が着く任務って結構命中率高かったから…」
 こいつもそんなこと気にするんだ。ちょっと意外。

 そんなゆっくりした時の流れは、ファインダーに入った一本の電話で崩される。
「大変です!教団本部よりこの近くの町に行った部隊が戦闘中の上、エクソシストが一名倒れ、もう一人も手間取っ
ている緊急事態だそうで、応戦願いがでています。」
「分かったさ。至急向かうと伝えて」
 外を見ていたはずのアレンの目に、焦りが見えた。
「それで、今の情況をもっと詳しく教えてください」
 こういうときは誰よりも必死なお人好しの性格。オレは興味ないとちょっとやる気でないから、こういう時って意
見が割れるんだよな〜
「次の駅を降りて東に3qとかなり近いところです。レベル2のアクマ一匹なのですが、その能力が正体不明で…」
「一人今戦ってるのは誰さ?」
「…神田ユウ殿です…」
 列車の個室の中に一瞬冷たい風が吹いたようだった。アレンもオレも次に出る言葉が見つからない。オレら二人の
頭の中を駆けめぐった言葉は同じはず。
 “ユウが危ない”
 駅に着くことなんて待ってられない。そんなときはオレの槌でひとっ飛び。



                              2へ続く。